歯列矯正治療は保険適用になる?適用される症例や治療費負担を軽減する方法
- カテゴリー:歯科全般
- 2024.12.20
歯列矯正治療は保険適用になる?適用される症例や治療費負担を軽減する方法
徳島県 徳島市 喜多デンタルクリニック
歯科医師・院長 喜多大作
歯列矯正は美しい歯並びや正しい噛み合わせを得るための治療ですが、費用が高額というイメージをお持ちの
方も多いのではないでしょうか。
結論から言ってしまうと、歯列矯正治療は保険は適用されず、自費診療です。しかし、特定の症例や条件に当て
はまる場合には、保険が適用されるケースがあります。この記事では、保険が適用される基準や費用負担を軽
減する方法について詳しく解説します。
■歯列矯正はなぜ基本的に自費診療なのか
日本の歯列矯正は、多くの場合「自費診療」として扱われます。これは、美容目的で行われる矯正治療が大半
であることが理由です。例えば、「歯並びを整えて見た目を良くしたい」という治療は、健康保険が適用されませ
ん。そのため、一般的な矯正治療では治療費が高額になる傾向があります。一方で保険適用になる矯正治療
は、治療が必要と医療上判断されるケースに限定されています。例えば、日常生活に支障をきたすような顎の
変形や、先天性疾患に伴う不正咬合などが該当します。これらの症例については、「機能改善」のために不可欠
と判断されるため、保険適用が認められます。
■保険が適用される歯列矯正の条件
では一体、どんな条件の場合に、歯列矯正は保険が適用されるのでしょうか。
条件1. 噛み合わせの異常が先天性に伴うもの
生まれたときからの疾患により噛み合わせの異常がある場合は、保険適用になります。この条件については具
体的に該当する疾患が定められています。
疾患例として、口唇口蓋裂や、ピエールロバン症候群、鎖骨頭蓋骨異形成、筋ジストロフィーなどです。これらの
疾患に伴う矯正治療は、見た目よりも機能改善が先行する目的なので、医療保険の適用が可能です。
ほかのケースについては、日本矯正歯科学会のサイトをご覧ください。
日本矯正歯科学会
条件2. 前歯が3本以上生えてこない
永久歯の前歯3本以上が生えてこなく、埋伏歯開窓術が必要と判断されるときは機能性の問題に該当するので
歯列矯正治療は保険適用になります。
条件3. 顎変形症に伴う噛み合わせの異常
顎変形症に伴う噛み合わせの不正など、骨格性不正が大きい場合は一部医療機関で保険適用になります。自
分の症例が保険適用の対象となるかどうかを確認するには、歯科医院での診断が必要になります。カウンセリ
ングの時点で事前に相談してみましょう。
■保険適用の歯列矯正の流れ
保険適用されるかどうかを確認するには、まず歯科医院でカウンセリングを受けることが必要です。矯正歯科医
や口腔外科医が、保険適用の可能性について詳細に説明してくれます。特定の症例に該当する場合、診断書
の発行や保険申請の手続きが行われます。保険適用を受けるためには、診断書やレントゲン写真などが必要
です。これらの書類を元に医療機関が保険請求を行うため、患者様自身が特別な申請を行う必要は基本的に
ありません。ただし、詳しい手続きについては医療機関に確認しましょう。
■ 自費診療で行う矯正治療費の目安と保険適用時の負担額
歯列矯正治療は基本的に保険適用とならず、自費診療になるので治療費用が高額になります。治療費用は部
分矯正か全体矯正かによっても異なり、どんな種類を選ぶかによっても異なります。歯列矯正治療の費用の相
場を見ていきましょう。
ワイヤー矯正
部分矯正:30〜60万円
全体矯正:60〜130万円
裏側矯正
部分矯正:40〜70万円
全体矯正:100〜170万円
マウスピース矯正
部分矯正:10〜40万円
全体矯正:60〜100万円
※上記の費用はあくまで相場です。全体歯列矯正を行う場合は100万円前後の費用が必要になるケースが多
いため、余裕をもって治療にのぞみましょう。
保険適用が認められた場合、患者様の自己負担額は3割になります。
例えば、治療費が50万円の場合、自己負担は約15万円に抑えられます。外科手術を伴う場合も、手術費用の
大部分が保険でカバーされるため、経済的な負担を大幅に軽減できます。
■保険適用になる歯科医院の探し方
保険適用の矯正治療を受ける場合は、保険診療に対応している医療機関を選ぶ必要があります。すべての歯
科医院が保険適用の矯正治療に対応しているわけではないため、事前に問い合わせることが重要です。保険
適用で歯列矯正治療を受けたい場合は、以下のような方法で歯科医院を探してみてください。
1.地方厚生局の公式サイトにアクセス
2.地方厚生(支)局を選択する
3.「施設基準届出受理医療機関名簿」と入力
4.住んでいる地域の「届出受理医療機関名簿」を開く
5.受理番号の項目に「矯診」「顎診」と記載された医療機関を探す
「矯診」と記載されている医療機関→咬合異常の保険診療に対応
「顎診」と記載されている医療機関→顎変形症の保険診療に対応
■自費診療でも歯列矯正の費用を抑える方法
自費診療でも治療費用を軽減する方法があります。
①医療費控除を使う
歯列矯正治療は基本的に医療費控除を使うことができます。医療費控除は、1月1日から12月31日までの1年
間に支払った医療費が高額となった場合、所得税で控除が受けられる制度です。条件は総所得金額が200万
円以上の場合は、年間10万円以上の医療費支払いで控除適用、総所得額が200万円未満であれば、総所得
金額の5%分の金額が控除対象となります。保険金などを受け取った場合、その額を差し引いて計算する必要
があります。詳細は国税庁のサイトをご確認ください。
なお、1年間に支払った医療費なので、歯科医院以外で支払った医療費も含めて計算できます。治療するため
に必要だった薬代や公共交通機関利用料金なども含まれるため、明細書や領収書はしっかり保管しておくよう
にしましょう。
②分割払いを利用
クレジットカードの分割払いを利用することで、一度に大金を払う必要がなくなるため、支払いの負担を減らせま
す。分割払いは、後から自分で設定できるほか、ポイントも貯まります。
③デンタルローンの活用※審査あり
歯列矯正治療を行っている歯科医院の多くではデンタルローンを導入しています。デンタルローンを利用できれ
ば、治療費を24回分割などで支払うことができるので、月々の支払い負担を軽減させたい場合におすすめの手
段です。
■まとめ
歯列矯正治療は、一部の条件を除き保険適用外で、一般的に自費診療になります。保険が適用されるかどうか
の詳細については、治療を受ける歯科医院の歯科医師に確認するようにしましょう。保険適用外の場合でも、医
療費控除分割払い、デンタルローンなどを利用することで、治療費用の負担を軽減できます。経済的な負担を
減らす工夫をしながら、理想の歯並びを手に入れましょう。
また、保険適用が認められた場合でも、使用する矯正装置によっては追加料金が発生することがあります。例
えば、審美性の高い装置(セラミックブラケットやマウスピース型矯正装置)は保険適用外となる場合がありま
す。こちらも併せて確認しておきましょう。